・洗濯や手入れを怠ることの不具合が理解できる
・ゴアテックスの洗濯方法が理解できる
・撥水の回復方法について理解できる
・日常のお手入れと不定期的なメンテナンスについて理解できる
ゴアテックスのレインウェアは非常に高価ですね。そんなゴアテックスのウェアの手入れ・メンテナンスはどうすればいいのか皆さん知っていますか?
何となく洗濯しているとか劣化が怖いので洗ったことはない・一度もメンテナンスをしたことがない等いったいどれが正解なのか悩みますよね。この記事ではそんなゴアテックスレインウェアのメンテナンス方法を解説していきます。
普段からゴアテックスなどアウトドアウェアを専門にメンテナンスやクリーニングをしている「そらのした」がこの生地を執筆しています。なお、より深く理解したい方は下記の記事も併せてお読みください。
ゴアテックスレインウェアは手入れ・メンテナンスが必要です
まずはゴアテックスのウェブサイトより引用です。
より長くご愛用いただくために
GORE-TEX® アウターウェアが備える高機能は、GORE-TEX® メンブレン自体に損傷がない限り低下することはありません。しかし、ウェアとして長くご愛用いただくためには、日頃のメンテナンス&ケアが大切です。
ウェアの寿命は一概に何年とはいえませんが、ていねいなケアをすれば相当に長期間にわたって着用することができます。GORE-TEX® アウターウェアのメンテナンス&ケアは特別にむずかしいことではありませんので、ぜひ実践してください
ゴアテックスのウェブサイト内メンテナンス&ケアというページの冒頭に記載してある文章です。つまりゴアテックスの素材自体はメンブレンと言われているゴアテックスの本体部分が損傷(例えば破けてしまう・穴が開く)といったことが無い限りは機能が低下するこは無いと解説してあります。
要約するとしっかりメンテナンスをしてあげることで長く使うことができますよということです。
ゴアテックスを簡単に解説(もしかするとゴアテックスを勘違いしているかも)
ゴアテックスを誤解している人が意外に多くて、上記の解説が良く分からないという人がいると思います。ゴアテックスがジャケットや衣類そのものだと思っている人、勘違いです。また、ゴアテックスは生地だと思っている人、それもちゃんと理解はできていません。
ゴアテックスは生地の内部に使われている素材です。言うなれば生地の一部です。ゴアテックスウェアの生地は一枚物でできているわけではなく、2枚とか3枚の重ね合わせでできています。重ね合わせた素材の中の1つに過ぎません。そのため、上記の説明である、「メンブレンと言われるゴアテックスの本体部分が損傷しない限りは機能が低下することはない」ということになります。
では残りの素材は何なのか?と言われれば、残りの素材は一般衣類に使われているような繊維です。例えば最外層にはナイロン生地が使われていたりします。ウィンドブレーカーで使われるナイロンジャケットのナイロン生地と変わりません。ゴアテックス以外にも別の素材が使われている中で、それらを含めてパフォーマンスが最大限発揮されるので、手入れ・メンテナンスが重要ですよと言ってくれています。
ゴアテックスの手入れを怠ることで起きる3つのデメリット
ゴアテックスの手入れ・メンテナンスを怠ると、せっかく備わっているゴアテックスの高機能が発揮できないばかりかデメリットを引き起こします。特に登山に関しては快適性に加えて場合によっては命に関わる問題になる場合もあります。しっかりと手入れ・メンテナンスをしないといけないという意識を持っていただけたら嬉しいです。
手入れを怠ると起こるデメリット①【透湿性の低下】
まずは分かりやすいデメリットとなります。ゴアテックスのウェア等の透湿性素材を使ったものには透湿性の数値が記載されています。
1平方センチメートルに約14億個もの微細な孔(0.2ミクロン)を持つ、世界最高水準の防水透湿性素材(耐水圧50,000㎜以上、透湿性25,000〜98,000g/㎡・24hrs JIS L-1099B-1法・参考値)(※1)です。
モンベルウェブサイトより引用
この数値、実環境での測定ではなく、理想的な状況、つまり最大値が掲載されています。測定する際に汚れや透湿性の低下を考慮することはしていません。もっと言えば、ゴアテックスのメンブレンのみで測定している場合があり、実際は上下に生地がラミネートされるためもっと透湿性は悪くなります。
上下の生地がラミネートされることによる透湿性の低下は私たちではどうすることもできないので仕方ないものとしても、実環境では汚れや表面生地の撥水低下によってより一層透湿性は低下します。この部分は私たちが手入れ・メンテナンスをすることで低下を防ぐことができます。
手入れを怠ると起こるデメリット②【ウェアの重量が増える】
撥水性が良い状態だとウェアは水分を含みません。そのため雨が降ってもウェアの表面生地を水がコロコロと転がってくれます。しかしながら手入れ・メンテナンスをしないで撥水性が低下してしまうと、ゴアテックスにラミネートされているウェアの表面生地が水を含むようになります。
表面生地が水を含むことでウェア全体の重さが増してしまいます。それにより水を含んだウェアは重たくなり疲労に繋がります。
手入れを怠ると起こるデメリット③【冷えにつながる】
ウェアが水を含むことでウェア自体の重量が増えることは想像しやすいと思います。しかしさらに悪いことが重なり、ウェアが水を含むことで体の冷えにもつながります。
冷凍庫の棒アイスを取り出して、アイスを食べるとき、木製でできている木の部分を持ちますよね?木の棒の部分を持っていていつまでも冷たいと感じることはありません。でもアイスの部分をずっと持っていることは冷たくなってできないと思います。
実はこれ、アイスの部分は水を多く含み、熱を伝えやすいためです。水は熱を伝えやすく、ウェアが濡れていることでウェアの内部の体温を外に放出してしまいます。これによって冷えに繋がります。手入れ・メンテナンスをすることでこのようなデメリットを防いでくれます。
ゴアテックスレインウェアのメンテナンス&ケアとはいったい何?
先のゴアテックスウェブサイトの引用の中に「日頃のメンテナンス&ケアが大切です」と記載してありますが、そのメンテナンス&ケアとは具体的にどういうことを示しているのでしょうか?
ゴアテックスを販売している日本ゴア株式会社より「GORE-TEX Products メンテナンスブック」というものが発行されています。そのメンテナンスブックの冒頭に一つの流れが記載してあります。
【日常の手入れ】START⇒洗濯⇒すすぎ⇒乾燥⇒熱処理⇒GOAL
まさにこれがメンテナンス&ケアの一つの流れになります。
但し一点追記しておきたい部分として、上記流れは日常で行う手入れと捉えてほしいのです。これだけやっていれば充分か?と言えば残念ながら不充分です。
メンテナンスブックには上記一連の流れの後に「撥水剤・補修」というページがあります。これが不定期に必要なメンテナンスであると考えてください。この日常のケアと不定期に行うメンテナンスを組み合わせてこそ充分なメンテナンス&ケアであると言えるのです。
ゴアテックスの洗濯&メンテナンス①【ゴアテックスレインウェアの洗濯のタイミングは?】
それではゴアテックスのレインウェアをいつ洗うのか?毎回洗うのか?月一回洗うのか?それとも年一回でいいのか?悩ましいですよね。こちらに関してもゴアテックスのウェブサイトに正解が記載してあります。
定期的な洗濯で、ウェアを長くご愛用ください
ほとんどのGORE-TEX® アウターウェアは、洗えます。洗たくによって機能が低下することは一切ありませんので、汚れたら洗ってください。
また、洗たくは、ウェアの撥水性の維持や回復にも役立ちますので、汚れが目に見えなくても定期的に洗ってください。
引用に記載されているように「汚れたら洗ってください」と書いてあります。汚れたら洗えばよいのです。注意して欲しいのは「使用する度洗ってください」とは書いてありません。
あくまで書いてあるのは「汚れたら洗ってください。汚れが目に見えなくても定期的に洗ってください」と書いてあります。ゴアテックスの洗濯方法をよく分かっているつもりでも誤解していて、使用する度に洗っていた人も多いのではないでしょうか。なぜ使用する度、使う度に洗ってくださいと書いていない理由があって、それは後述します。
ゴアテックスの洗濯&メンテナンス②【洗濯やすすぎで注意すること】
「GORE-TEX Products メンテナンスブック」に記載してある内容で洗濯からすすぎにおいて特に注意した方が良い点を挙げていきます。
洗剤の種類に注意
どんな洗剤を使っても良いかと言えばそうではありません。皆さんが普段使っている洗剤は実はいろいろな助剤がブレンドされている洗剤です。とくにおしゃれ着洗い用洗剤やドライクリーニング用洗剤というわけではなくても少量の柔軟剤・芳香剤・漂白剤が入っていることがあります。
柔軟剤や芳香剤は洗濯しても衣類に残ることでその効果を出すことを目的としているため、ゴアテックスレインウェアに残存することで本来のゴアテックスのパフォーマンスが出せなくなってしまいます。そのため洗剤はできる限り混ざりものが入っていないものが望ましいです。
洗剤の量に注意
ここもまたメンテナンスブックに記載してある内容ですが、洗剤の量は少量と記載してあります。塩・コショウの「少々」みたいになんだか分かりにくい表現で書いてあります。
汚れが目立たない定期的な洗濯の場合は通常の洗剤の量の半分以下で構いません。汚れがひどい場合にのみ汚れの箇所に洗剤を付けて洗うようにしてください。
すすぎはしっかり
洗剤の残存はゴアテックスウェアにはマイナスですのですすぎをしっかりとおこなって洗剤をよく流します。メンテナンスブックには「すすぎは通常の2倍」と記載してあります。
家庭用洗濯機の場合、すすぎ回数を選べるようになっていると思います。たいていすすぎ回数を1回から3回まで選べるようになっているかと思いますので、しっかりと3回のすすぎを行ってよく洗い流す必要があります。
ゴアテックスの洗濯&メンテナンス③【乾燥と熱処理】
次に「GORE-TEX Products メンテナンスブック」に記載してある内容で乾燥と熱処理において特に注意した方が良い点を挙げていきます。
脱水は簡単でOK
Tシャツやタオルと違って、レインウェアは水を通さない素材で作られてるため長い時間脱水を行っても脱水しきれない水が溜まります。洗濯機に悪影響ですので脱水は無くて構いません(実際に洗濯機の説明書にはレインウェアNGと記載してあることがあります)。それよりも洗濯機から取り出す際にレインウェア内に溜まってしまう水をよく切る方が大切です。
乾燥は陰干し
乾燥は陰干しにてしっかりと乾かしてください。ポイントとしては時間をかけて細部までしっかりと乾かすことです。紫外線のダメージが残りますので直射日光での乾燥ではなく陰干しの方が良いです。
熱処理が大切
メンテナンスブックの方にも乾燥後には熱処理をおすすめしますと記載してあります。しっかりと撥水している状態を保つことはゴアテックスレインウェアにとってとても重要です。撥水状態を保つためにも熱処理を行いましょう。
熱処理は乾燥機またはアイロンによる方法が記載されていますが基本的には乾燥機を使用しましょう。まずは乾燥機に入れる前にしっかりとウェアを乾かし、しっかりと乾いたウェアを20分ほど乾燥機に入れる点がポイントです。
ゴアテックスの洗濯&メンテナンス④【撥水性回復】
先に説明した流れは日常で行う手入れですよと説明しました。それでは他に不定期に必要なメンテナンスがありますので、そちらについて説明していきます。
撥水性の回復は日常の手入れとは別に行う必要がある
ゴアテックスメンテナンスブックに下記の記載があります。
撥水加工は摩耗などにより撥水基自体が取れてしまうことがあります。その場合は熱処理ではもどらないので、撥水処理をしてください。
撥水加工は永久的なものではなく、特に摩耗によって剥がれてしまいます。実は先にゴアテックスウェアの洗濯は使う度とは書いておらず、汚れたら洗ってくださいと書いてある理由もここにあり、洗濯をすることによってゴアテックス自体の機能は低下することはないが、表面の撥水加工は洗濯の際の摩耗によって少しずつ低下していきます。
何度も洗うことで撥水力が低下することは事実としてあり、洗いすぎることでもゴアテックスウェアのパフォーマンスは充分に生かせなくなってしまいます。だからと言って洗わないことも良くないため不定期な撥水加工・撥水処理が必要になります。
実際に洗濯回数と撥水力の低下具合を調べたデータがありますので下記に載せておきます。
「droproofウェブサイトより引用」
では、いつ撥水性の回復をすればいいの?
撥水加工・撥水処理をするタイミングは上記の日常ケア、特に「ゴアテックスの洗濯&メンテナンス③【乾燥と熱処理】」を行っても撥水性が戻らない時に行います。
逆に言えば都度行う日常のメンテナンスや洗濯で撥水性の回復を行う必要はないとも言えます。
どのように撥水性の回復を行う?
撥水加工・撥水剤はどのようなもので行うかに関しては、ゴアテックスのウェブサイトや各メーカーのメンテナンスが書いてあるページ等では市販の防水スプレーや撥水剤・クリーニング店の撥水加工を行ってくださいと記載されております。それ以上に具体的には書いてありません。実はこれら撥水処理が最大に難しいポイントでもあります。
市販の撥水スプレーや撥水剤はどうか?
防水スプレー・撥水剤・クリーニング店の撥水加工いずれにおいても新品ウェアの頃のような撥水性を取り戻すことが出来ません。幾つか理由がありますが、撥水剤は家庭で簡単に撥水処理をすることを目的に作られており、簡単に処理できる分、定着はしません。また、撥水剤の成分も家庭用で失敗しにくいように作られているので、撥水性を高めることよりも失敗が起こりにくいように配合されています。そしてさらに後加工で行うことの難しさがあります。
新品のウェアは布切れの状態で撥水加工を行います。しかしながら後加工では、そもそも表面に汚れが付着していたり、すでに付いている撥水剤の上に撥水剤を定着させる技術が必要になります。これには大変な技術力が必要で、下処理や適切な処理方法なくそのまま撥水処理しても、撥水性は回復できません。もしくは一時的に撥水性が回復しても維持継続が大変弱いです。そのため新品のウェアと比べて撥水基の持続力に雲泥の差が出てしまいます。
【ゴアテックスの洗濯】手入れ・メンテナンスのまとめ
ゴアテックスの手入れ・メンテナンスの大切さについて少しでも理解が深まったのであれば嬉しいです。
なお、撥水の詳しい原理を学びたい方は下記の記事を参考にしてください。
ちなみに、私たちは後加工でもしっかりとウェアに密着した撥水基が作れないものかと研究して開発しています。そして一般の方向けにサービスアップしたものがアウトドア専門のクリーニング&撥水加工サービス「ドロップルーフ」になります。
一般クリーニング店とは違って私たちはアウトドア専門です。そのため一般ウェアは受け付けておりません。ゴアテックスなどのアウトドアウェアのために全行程を最適化しておりますので、アウトドアウェアを本当に信頼できるお店に出したいという方に向けて寄り添いたいという思いでサービスを作りました。
自身で撥水処理をする場合、撥水処理した直後1回や2回の使用であれば撥水効果は持続するかもしれませんが、レインウェアを数回使用すれば撥水処理前と変わらない状態になってしまいます。ウェアに撥水基がしっかりと定着していないことが原因です。その原因を研究・開発し克服したのが「ドロップルーフ」サービスになります。
日常の手入れを行って、それでも撥水が弱まったと感じたら撥水処理とクリーニングも兼ねて「ドロップルーフ」に出して本格的なメンテナンスをすることをおすすめします。