~佐藤小屋はナナカマド一色~
富士山吉田口登山道。その5合目にある山小屋。
車で行くスバルラインの五合目ではなく、麓からの登山道を歩いて1,2,3,4合目の先にある由緒正しい五合目。そこに立っているのが佐藤小屋です。
私は10月の終わりに向けた時期の、この佐藤小屋の景色が好きです。もちろんここのテラスから、缶ビールをいただきながら見下ろす雲海や麓の景色も素晴らしい。
でも、私が好きなのはこのなんでもない、ただ古いだけの(失礼!)佐藤小屋自体を眺めることなんです。
実は建物全体が燃えるように鮮やかな、赤一色に染まるんです。
まるで佐藤小屋が炎に包まれているようです。富士山五合目、佐藤小屋ならではの秋の絶景です。
種明かしをしましょう。
炎の正体は「ナナカマド(七竈)です。七回竃(カマド)にくべられても燃え尽きないので、この名前がつけられたという根性の木です。その炎はさぞかし見事な赤なのでしょう。紅葉の時の赤も負けていません、植物を超えた幻想的な色です。
ナナカマドの紅葉は、まず実が真っ赤に色付き、それを追うようにして葉が紅葉していきます。佐藤小屋が赤く染まるのは、実はこのナナカマドの木が林のように建物を囲んでいるからなのです。
名誉のために言っておきますが、決して佐藤小屋が危険、などということはありません。それどころか、この小屋は富士山には珍しくほぼ通年で営業して登山者を迎え、ご主人はいざ遭難の連絡が入れば真っ先に救助に向かってきた、そして今も向かっている方です。
実は私は、ナナカマドの木は、この御主人と佐藤小屋からのメッセージだと信じている一人なのです。
花言葉は「慎重・用心・注意」。
毎年多くの登山者を見守る人と建物。ナナカマドの花言葉は、まさにこのご主人と小屋のためにあるのだ。私たちはそう納得しながら、今年もビールを愛でながら、佐藤小屋の燃えるような秋を堪能します。
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